y たたかう警官

 私は一九五七年(昭和三二年)、北海道警察に採用され、翌年、札幌中央警察署に勤務し、初めて裏金なるものの存在を知った。六四年に北見方面本部刑事課に異動になってからは、直接、ニセ領収書の作成に手を染めるようになり、釧路方面本部長を最後に九五年(平成七年)に退職するまで、すべての所属部署で、直接的間接的に裏金に関与してきた。/ そうした関与の中には、出向先である警察庁保安部防犯課や、山梨、熊本両県警の捜査二課勤務時代の体験も含まれている。全国警察組織を束ねる警察庁の裏金の実態については、すべて知る立場になかったため、一部のことしかわからない。だが、警察内部の裏金疑惑が、私が道警に採用される以前から、連綿と続いていたのは疑いようのない事実だ。/ ・・・徽章の「星の数」が増え、黒塗りの車に乗り、部下から祭り上げられているうちに、私は何か大切なものを失ってしまった。それは、私の人間としての弱さ、自己保身へのこだわり以外の何ものでもない。/ 裏金問題の根幹には、人間の欲望が横たわっている。誰もがカネの前に弱さをさらけ出し、欲望をむき出しにする。目の前に領収書のいらないカネがある。後のチェックもない。そこで、カネを受けとってしまうかどうかは、つまるところ、人間の倫理観、良心の問題だ。私はこれ以上、自分の良心をあざむくことはできない。

 『たたかう警察』(ハルキ文庫版、09年刊)の一部です。著者は原田宏二さん。現在七十四歳。先週の日曜日(21日)、都内であった小さな集会に参加し、原田さんにお会いした。04年2月、記者会見を開いて道警の積年の裏金問題を告発した当事者であった。テレビ画面を見ながら、「奇特な方もいるのだなあ」と奇妙に感心したことをはっきりと記憶しています。その後、北海道新聞がキャンペーンを張り、道警の疑惑を追及し、ついに裏金問題を認めざるをえないところまで道警は追い込まれた。それを境に、北海道新聞は道警から完膚無きまでに叩かれ、立ち直れないほどの打撃を受けたのは周知の事実です。原田さんが警察を退職した八年後の「告発」だった。警察という権力は自己保身のためには手段を選ばない権力集団であるという驚愕の事実が実にていねいに解き明かされています。けっして裏金問題だけではないのが手に取るように明かされる。その後の原田さんはまるで自己の罪科(つみとが)を償うかのように、さらには日本の警察の甦生を祈るばかりに旺盛な活動を展開されています。同書は原田さんからいただいたもので、一気呵成に読了し、長嘆息しました。(11/08/28)

*市民の目フォーラム北海道http://www.geocities.jp/shimin_me/