m 開けられた再審の扉

 福井女子中学生殺害:前川さんの再審決定 高裁金沢支部 福井市で86年3月、中学3年の高橋智子さん(当時15歳)が顔や胸などを刺されるなどして殺害された事件で、名古屋高裁金沢支部(伊藤新一郎裁判長)は30日、殺人罪で懲役7年が確定し服役した同市の前川彰司さん(46)の再審請求を認め、再審を開始する決定をした。伊藤裁判長は「弁護側が提出した鑑定結果は、有罪の根拠になった関係者の供述の信用性に疑問を生じさせる」と述べた。/確定判決は「前川さんが事件直後に血のついた乗用車に乗っているのを見た」などという目撃供述をよりどころにしたが、車から被害者の血液反応は出ていなかった。弁護側は「本当に血が付着したのなら、拭き取っても血液反応は出たはず」とする実験結果を新証拠として提出。決定はこれを踏まえ、「確定判決がよりどころとする目撃供述の一部に合理的疑いが生じる」と判断。血液が前川さんに付着していたとする複数の関係者の供述も「改めて検討が必要で、いずれも強い疑いを生じさせる」と指摘した。/被害者の傷には、現場に残された包丁の幅より傷口の長さが短いものが複数あった。弁護側は「傷のうち2カ所は現場に残された包丁2本とは別の刃物でつけられた可能性がある」とする法医学者の意見書などを提出し、決定は「2本の包丁だけで傷ができたとした確定判決の判断には合理的疑問がある」と判断した。

 再審請求では、同支部の勧告を受け、遺体や現場状況の写真なども証拠開示され、新証拠として提出された。それによると、血の飛散を防ぐため、被害者にこたつカバーが掛けられるなどしていた。また、現場に指紋・足跡なども残しておらず、決定は「確定判決が指摘するような、心神耗弱者の犯行ではなく、合理的で、高度の思考力を備えた犯人により実行されたと考えなければ説明のつかない点が多々ある」と指摘した。/決定はこれら新証拠が確定判決を疑わせる証明力があるとし、新証拠と確定判決までの旧証拠と合わせ、「前川さんを犯人と認めるには合理的疑いがある」と結論づけた。【宮本翔平、日野行介】 【ことば】福井女子中学生殺害事件=86年3月、福井市の市営住宅で、卒業式を終えた中学生の高橋智子さん(当時15歳)が顔など45カ所を刺されるなどして殺害され、同市の無職、前川彰司さん(46)が殺人容疑で逮捕、起訴された。前川さんは一貫して否認。福井地裁判決(90年)は無罪だったが、名古屋高裁金沢支部判決(95年)は懲役7年の逆転有罪を言い渡し、97年に最高裁が上告を棄却して刑が確定した。前川さんは服役後の04年、名古屋高裁金沢支部に再審請求した。(毎日新聞・11/11/30)

 逮捕され、懲役七年の刑に服した前川さんの再審が決定された。物的証拠がなく、取り調べに当たった警察と検察の描いたストリーにまんまとはまった二審と最高裁の裁判官たち。くりかえされる「冤罪」事件。司法への信頼もあったものではない。あいつを犯人にしてやろうという「善意(実は悪意)の市民」となにがなんでも犯人を作りあげたい権力者たちの合作劇ですが、その主役に仕立て上げられた人間はたまったものではありません。強いられた有罪の罠から脱出し、無罪(必ずしも無実を意味しない)を勝ち取るために生涯を賭けるというのはいかにも悔しい。冤罪はどうして起こるのか、真実(真犯人)ではなく、犯人捜しに躍起となる警察や検察の横暴(人権侵害)はいうまでもないが、裁判に臨む弁護人の責任はきわめて重いといわなければならない。あからさまなでっちあげを突破するだけの力を弁護人が持たなければ、これからも「冤罪」事件は起こり続けます。

 「再審開始が決まったのはマスコミが騒いだから。(前川さんが)名誉回復を求めるなら、元組員やその仲間たちを名誉毀損(きそん)で訴えればいい」というのは当時の警察幹部です。(毎日新聞・11/12/03)」

 出来レースのような取り調べ(警察)や起訴(検察)を鵜呑みにする司法(裁判)。誤審が明らかになったとして、どうしてそのような過ちを引きおこした警察・検察・裁判に関与した権力者は責任を問われないのでしょうか。(11/12/04)