q 未執行死刑囚120人に

 死刑が1年以上執行されず、未執行のまま拘置中の死刑囚が過去最多の120人に達した。江田五月法相が「当面の執行停止」を表明するなか、法務省内に設置した死刑制度の勉強会の議論も進んでいない。裁判員裁判で既に8件の死刑判決が言い渡されている。法律に従い重い決断を下した国民の心情が置き去りにされているともいえる。/「悩ましい状況に悩みながら勉強をしている最中。悩んでいるときに執行とはならない」。江田法相が現職大臣として異例の「死刑執行停止」を宣言したのは7月29日の記者会見。「『死刑の在り方についての勉強会』の議論を見極めたい」と理由を説明した。(日経新聞・11/08/03)

 死刑執行が滞っているというが、さしあたって、それは何よりだとぼくはいいたい。現行の法体系では最高刑として死刑が規定されている。だから死刑囚には(判決確定から六ヶ月以内に、法務大臣のサインをもって)刑の執行がなされるのが当然だという。そうだろうか。刑法が制定されてから百年以上が経過しました。また今日、少なくない国々では死刑制度を廃止したり長期間の死刑執行の中止をつづけています。EU(ヨーロッパ連合)加盟の条件に死刑制度の廃止が求められてもいる。凶悪犯だから「殺すのが当然」という報復のイデオロギーにどんな根拠があるのですか。野良になったり捨てられた犬や猫がじつに無残に殺されています。そして、「一匹の犬・猫」の死に、多くの人はビックリするばかりの優しさを示す。でも、ときどき見られる「●●死刑囚の死刑執行」報道に、いったいどれほどの人が悲しみ涙するのか。死刑囚は犬・猫に劣るのだという人間観は底深い悪意を潜めているのではないでしょうか。

 「死刑の在り方についての勉強会」の議論の行方を見守るといって、何か結論が出ると考えているのなら、法務大臣は職務怠慢です。まず、みずからの態度を明らかにし、そこから議論を始めないで、死刑制度賛成派・反対派の意見開陳させるだけのポーズにどれほどの問題意識があるのか。この課題について、もしもこれまでの議論があるなら、それをふまえて確実な記録や情報を開示し、現実にはいったいどのようにして死刑が執行されるのか(死刑囚が国家権力によって殺されるのか)、それをありのままに明らかにする責務が当局にはあるはずです。なんの根拠もも示さないで「凶悪人を死刑にしてはいけませんか」と聞かれたら、よほどの奇人でないかぎり、「だめです」とはいわない。(11/08/29)