t 窮境に入る裁判員裁判

山陽新聞

 さまざまな課題を残したままで導入された裁判員裁判制度。キャッチフレーズは俗耳に入りやすいのとおり、いとも簡単に(と思われた)始められたが、さて実態はどうか。四日ほどのスピード審理で困難な事件もたちどころに一件落着とはいかないようだ。鹿児島市で被告人が無実を訴えていた殺人事件では求刑は死刑だったが、一審判決は無罪(12月10日)。検察は控訴した(12月22日)。裁判開始から判決まで四十日以上が費やされた。一審の判決が上級審(職業裁判官による)で争われるが、仮に一審の判決が覆されることになれば、裁判員裁判の有効性が裁かれることになる。それよりもなによりも重大な問題は「死刑」の判断が多数決で決められという不条理だ。5対4で「死刑」というのはどう考えても理不尽だと思われる。多数決はジャンケンじゃないという向きもあるかも知れないが、はたしてどうか。だれもが裁判員になる確率は高くない。国民の国民による国民のための裁判、新しい裁判時代の幕開けと謳われたが、その前にいくつもの課題が立ちはだかっているのである。(10/12/26・記)