x 善猫なおもて往生す

 孟夏の八月朔日の朝、一人の猫が静かに息を引き取った。現在地に引っ越し(1985年4月)して間もなく、近所を散歩中にダンボ-ル箱に入れられ捨てられていたのを見つけた子で、生まれて間もない姉妹の猫の一人だったから、とっくに二十年を過ぎて生きていたことになる。もう一人は数年前に死んでしまった。人間なら百歳を超えているといわれるが、それは変な譬えで、百歳の人間が亡くなれば、猫だったら二十歳だとはいうまいに。猫、死んじゃった!

 これまでどれだけの猫とともに暮らしたことか。猫のいない生活は考えられもしないようになるほどだった。現在もなお、七人の猫が家(の外)に住みついている。人間の愚かさをこれでもかとみせられるにつけ、猫はいいなあと心底から思うようになった。これまでに共棲していてぼくよりも先に逝った猫たちの骨壺がいくつも座敷に置かれている。死してなお、ぼくたちを見据えてくれているというのはどうか。まさしく家中に爪痕を残して、猫(マルちゃん)、死んじゃった!(10/08/01)