z 酒飲みのたわごと

 

 いつ頃から飲みだしたか。たぶん、大学に入ってから晩酌をはじめたと思う。なにごとによらず、はじめはうまくいかないもので、うまずたゆまずひたすら練習のくりかえしで、そのうちに酒の味が少しはわかるようになった。親父は大酒飲みで、亡くなるまで一日も欠かしたことがなかった。それを見ていて、絶対に酒は飲むまいとかたく誓ったのは十歳くらいのときだった。それも二十歳を過ぎると、一丁前に飲みだしたのだから、誓いなんてあてにならないと悟った。今度は親父みたいな酒飲みにはなるまいと二度目の誓いをたてたのだったが、それもいつしか、親父そっくりのただの飲んべえになってしまった。

 以来、雨にも負けず風にも負けず、冬の寒さにも夏の暑さにも負けず、一を以て貫く勢いで、年を取ってしまったわけだ。アルコール分解酵素が多量に分泌するDNAを授かったのは幸福なことだったか、としばしば呪いもしたし、身の不明を恥じ入ったことも数限りない。酒は百薬の長といったのは、飲んべえの自己弁護だったといまでは思い知ったが、もう手遅れのようだ。(10/05/22)