x 百歳を超えた老人はどこに

 ハーメルンの笛吹き男という伝説があります。ニーダーザクセン州の一都市ハーメルンでは笛吹き男に依頼してネズミを退治してもらったが、約束の報酬を払わなかったというので笛吹き男は町の子ども130人を笛で誘って連れ去ってしまったという。十三世紀にあった実話がもとになったとされる。いま、この列島では百歳を超えた長寿老人が忽然と消えたと大騒ぎである。生死も定かでなく何十年も姿が見えないにもかかわらず、行政はさまざまな物的サポートをしているのです。自らの親がどこにいるのか、生きているのか死んでいるのか、それすら分からないという子どもが各地で説明に窮している。なかには行方不明の親に対する各種年金が数千万円に上る例もあるという。

 方や、幼児虐待件数がうなぎ登りで増加している。幼子を自宅に閉じ込めたままで何ヶ月も育児を放棄して放蕩していたママが逮捕される事件が起こった。哀れ、二人の幼児は餓死していた。熱湯につけたり、床に投げつけたり、食事をあたえなかったりと。したい放題で虐待死をもたらす親は数知れずというのではありませんが、なぜどうして、と問わずにはおれません。

 幼いもの、老人たち、その存在はまさしく危殆に瀕しているのですが、それはまたこの劣等国家に生きるすべての生命が危うくされていることの証明でもあるのです。人情、紙風船のごとし、か。はたまた、脳内神経細胞の限度のない劣化なのか。(10/08/06)