u 「夜蛾(よが)」先生のこと

 「青い山脈」が朝日新聞に連載を開始したのは、昭和22年6月でした。憲法も教育基本法も施行された時期でした。作者の石坂洋次郎は弘前出身で、むのたけじさんの在学した旧制秋田県立横手中学時代の担任(国語と修身)だった。細身で弱々しい声で、あだ名は「夜蛾」といった。「しくじってもユーモアで包み、恥をかかせない温かさがあった。・・・教室は解放感に満ちていた。民衆の喜びにつながる作風の人間主義が授業にも表われていた」とむのさん。(東京新聞「昭和史再訪」・10/06/16)

 むのさんが朝日新聞を辞め、郷里に戻って週刊新聞「たいまつ」を創刊するときには「半年ももたないから、やめれ、やめれ」といわれたが、「強情っ張りでやめないだろうから、お祝いの文を書いてあげる」と流行作家は原稿を寄せてくれた。「民主主義といふものを自分達の日常生活の営みの中で把握してもらひたい」とあった。いまは時代閉塞の状況がいたるところに充満しています。この先に何があるのだろうか。(10/07/05)