旅人の鼻まだ寒し初ざくら 

 花冷えもまた、春の訪れ。世情はいつに変わらず物情騒然。西に東に浮き世の薄情が重たく人心を覆いつくしています。これを快哉といっていのかlどうか、袴田巌氏の再審決定と釈放が報じられました(03/27)。48年目という無情であり無常でもあるでしょう。証拠は捏造で、自白は強要であると、静岡地裁は言いきったのです。しかし、その同じ法廷が「死刑」と断罪し、再審を却下するという無法を犯したのですから、いったい、司法はどこに足場を築いているのか。同じ証拠と調書にもとづいて黒といい白という。まだ、再審開始から無罪への道は遙かだと思われます。かりに無罪放免となった暁に、では「死刑」を言い放った裁判官や「死刑」を求めた検察になんの咎めもないのですから、実に不当な法律(権力)行使であるというほかありません。

 人の世に幾千万の日常があろうとも、あるいはそれが悲喜交々の情感に満たされていようと、時は転変し、春はまためぐり来ます。月日は百代の過客にして、また旅人なりとは芭蕉翁の感懐であり、旅人の鼻の寒さを託つのは蕪村です。花に浮かれ、匂いに気もそぞろになるのも、やるせない日々を送る身過ぎ世過ぎの処方でもあるのです。同じ花や匂いに遭遇するなら、人気(じんき)の絶えた境地で味わいたいものです。鼻まだ寒しならぬ、鼻まだ白むなどいうのは、金輪際ご免蒙りたいですね。(14/03/28)

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